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青梅の「マルイフルーツ」が90年の歴史に幕 閉店聞きつけ感謝の手紙も

店を営む橋本春市さん、久枝さん夫婦

店を営む橋本春市さん、久枝さん夫婦

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 青梅の青果店「マルイフルーツ」(青梅市勝沼)が5月で閉店する。橋本春市さん、久枝さん夫婦が営む同店の店頭には年中、季節の果物が積まれ、先代から続く木だるのぬか漬けが買い物客に喜ばれてきた。

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 春市さんの父親の伊助さんが丸伊商店として昭和の初めに創業。母親のシゲさんが側に寄り添い、春市さんも定時制高校に通いながら店を盛り立てた。間もなく久枝さんと所帯を持ち、跡を継いだ。高度経済成長の波が市内にも及び、街道に商店が軒を並べ「勝沼銀座」と呼ばれた。店名をマルイフルーツに変更。活気がある頃は果物の盛り籠の注文も後を絶たなかった。バブル経済の崩壊とともに、地方の商店街は地盤沈下。青梅市内も例外ではなく、シャッターが1つ、2つと下りる通りに「勝沼銀座」の面影は消えていった。

 それでもマルイフルーツは夫婦の人柄と確かな商売で支持されてきた。春市さんも久枝さんもまだまだ店に立つのが楽しみだった矢先、仕入れ先の東京都青梅青果地方卸売市場(藤橋)の閉場が知らされ、残念な思いで店を閉めることを決めた。

 閉店の張り紙を出してからある日、メモ書きの手紙が投函(とうかん)された。その手紙には、10年ほど前に青梅に住む当時の彼氏の見舞品としてフルーツを買い求めたとき、予算の少ない高校生を相手に、とても良くしてもらったことに対するお礼と、その時以来、十数年ぶりに青梅にやってきたその日、常連客に別れのあいさつをしているのを耳にし、閉店を心苦しく思ったことがつづられ、最後はねぎらいの言葉が添えられていた。

 当時、応対したのは久枝さんのようだったが、その高校生に確かな記憶はないという。誰にでも隔てなく真心で接してきたため、高校生には特別なことでも、久枝さんには当たり前のことだった。

 創業90年。閉店が近づき夫妻は互いに感謝し合う日々。写真が趣味で、個展を開いたほどの腕前の春市さんは「これからは妻と旅行しながら写真を撮りたい」と笑顔に。一方、久枝さんには「ぬか漬けの店は続けてほしい」という声が届いている。

 営業時間は10時~18時。日曜定休。営業は5月中までを予定。

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