秋川漁業協同組合が9月、水産資源を守る事業の一環としてウナギの稚魚放流を行った。
今年は、宮崎県産のウナギの稚魚75キロを放流。稚魚は3年ほどで育つという。ウナギが貴重になる昨今、「秋川でウナギを釣るなんて遠い昔のことのよう」と思われるが、今もウナギ釣りをする人はいる。子どものころから秋川に親しみ、アユ釣りやウナギ釣りを楽しんできたあきる野市舘谷の私市順一さん(66)もその一人。
漁法には穴釣り、石積み、ウナギ筌(うけ)、流し針などがあるが、私市さんは流し針が得意。ウナギ筌を使うこともある。流し針は川の石にタイヤのチューブをかぶせ、そこに長さ50㌢ほどの流し針を取り付け、川のふちなどに仕掛けるもの。ウナギは夜行性なので夕方仕掛け、朝引き上げるという。
経験と勘でウナギがいそうなところを選ぶのが腕。エサはドジョウやハヤ、夏場ならミミズを使うこともあるそうだ。私市さんは「サマーランド付近から檜原までなら、ウナギが多い所は戸倉や星竹のあたりかな」と話す。もう10数年前になるが、4月半ばから6月のアユの解禁までに、70匹ほど釣ったことがあるという。体長95センチ、重さ1.8キロの大物を釣り上げた経験もある。「太さがビール瓶ほどだった」と振り返る。
釣ったウナギは自分でさばき、蒸してかば焼きにして味わう。蒸して冷凍しておけば、いつもで食べられる。知人に分けてあげることもしばしばある。親しい人の中には「ウナギが食べたい」と私市さんに漁をせがむ人も。秋川でウナギを釣る人は私市さんが知るだけでも5~6人はいるといい、ライバルだが仲間でもあるという。「一時は油で汚れているような時もあったが、今では昔のようにきれいになってきた。自分にとって秋川は一生遊び場だし、心のふるさと」と私市さんは目を細める。