クジラ肉の卸や調理した弁当の販売を手掛ける「らじっく」(あきる野市雨間)が3月1日~3日、あきる野の飲食事業者と共同で、代々木公園(渋谷区)で開催される食のイベント「魚ジャパンフェス」に出店する。
日本では古くから一部の沿岸地域でクジラ漁が行われ、戦後の食糧難だった頃は主要なタンパク源として重宝された。しかし世界のクジラ類の乱獲を防ぎ管理することを目的に締結された国際捕鯨取締条約に1951年、日本も加盟し商業捕鯨から撤退。徐々に日本の食卓からは姿を消していった。
「らじっく」オーナーの板花貴豊さんは、親友が捕鯨船の仕事をしていたこをきっかけにクジラ肉に触れ魅了されたという。生態や現状を学ぶため、調査船の乗組員として3年従事。「この貴重な食材の魅力に気付いてくれる人が一人でも増えれば」と店を開いた。
昨年、あきる野で行われた産業祭への出店の際、市内のラーメン店「五ノ神製作所代表」の伊藤真啓さん、薫製専門店「いぶし庵」の高野俊明さんと出会い、2人は板花さんの思いとクジラ肉の魅力に共感。「副産物の素材を使い、付加価値の付いたメニューを作る」ことをポリシーとする伊藤さんは、クジラの脂などを使ったラーメンを、高野さんが開発した薫製肉を組み合わせメニュー化。今年、店でも限定提供し話題になったという。今回のイベントでは、クジラのステーキ丼とパエリアを販売する。
日本は昨年、クジラの資源管理を担う国際捕鯨委員会からの脱退を発表したことを受け、板花さんは「クジラを食べる文化が薄れた現代。こうしたタイミングで、その魅力を知らない若い世代に、脈々と息づいてきた日本の伝統に触れ、日本が誇る食材だと知ってほしい」と話す。