
奥多摩町内の観光用公衆トイレ清掃事業を手がけるオピト(奥多摩町氷川)の社長、大井朋幸さんの著書「ボクは日本一かっこいいトイレ清掃員」が6月15日、岩波書店から出版された。
「日本一きれいなトイレを5年間で作ろう」と、同町のトイレ改革が始まったのが10年ほど前。トイレ次第で観光地としての町の印象も変わると考え、トイレの洋式化や外壁の塗り替えなどを進めた。清掃ノウハウの取得などを条件に一部の清掃委託先を変更。2017(平成29)年、新たに奥多摩総合開発に委託。清掃作業チームは「オピト」の愛称で呼ばれ、大井さんは1期生としてリーダー的役割を果たした。
当時のトイレは便器に染みついたアンモニア臭のほか、マナーの悪い観光客が捨てたごみなどが散乱。「できれば使いたくない」と思われてしまうトイレが少なくなかった。作業は手仕事で丁寧にこなす。使用頻度の高い奥多摩駅のトイレなどは朝夕、清掃を行っている。観光客が増える週末や行楽シーズンには回数を増やしてきた。
大井さんは仕事に励む中で、トイレ清掃を「かっこよくて、誰もが憧れるような仕事に変えていけたら」との思いが芽ばえ、「日本一観光用公衆トイレがきれいな町、奥多摩」を目指し、夢中で突き進んだ。努力は実を結び、トイレの評価はがらりと変わり、「きれい」と評判を呼んだ。メンバーはボランティアとして河川などの清掃活動にも参加するようになった。
こうした活動は、2022年開催の地域紙「街プレ」の「SDGsアワード西多摩2022」で認められ、最高賞のゴールドを受賞。今年3月には独立し、オピトとして法人化。新たなスタートを切った。現在、スタッフは3人。女性トイレの清掃がスムーズにできるスタッフなど人材確保も進めている。
今回、トイレ清掃員として奥多摩で8年間活動を続け、大井さんが見つけた仕事の誇りと「チャラかっこよさ」を一冊の本にまとめた。「こうした歩みを記録した本は、子どもたちへ『どんな仕事にも誇りがある』ことを伝え、大人には『楽しく働く価値観』を考える機会になる」と言う。
大井さんは「トイレ清掃員でも夢はかなう。その答えは奥多摩にある。日本全国のトイレから世界をもっと元気にしたい」と夢を抱く。
価格は1,034円。一般書店、ネット書店で扱う。