JR青梅線・青梅駅前仲通りの懐メロ・スナック「鍵」(青梅市本町、TEL 0428-22-0415)のマスター中本功さんが、常連客を探している。
昭和の初めから1950~60年代の歌手や映画スターの映像をバックにカラオケが楽しめる店として知られる同店。中本さんは地元に生まれ育ち、21歳で同を開業。以後50年、シェーカーを振りながら青梅の盛衰を見続けてきた。20年続く「昭和の唄、ナツメロを愛する会」(石井幹一郎会長)の事務局長務める。
カウンターの壁には往年の俳優や歌手の映画写真がズラリと飾られている。原節子、李香蘭、美空ひばり、石原裕次郎など懐かしの大スターが50インチの大画面によみがえり昭和の雰囲気を醸し出す。佐藤千夜子出演の映画「東京行進曲」(昭和29年)の映像、山根寿子、藤山一郎出演の「影を慕いて」(昭和32年)など数百本の映像をストック。東海林太郎の映画「湖底の故郷」(昭和37年)ではダムに沈む前の奥多摩小河内地区が撮影されている。
そんな中本さんが探している常連客は美鈴さん。美鈴さんが同店で歌った歌を録画したテープを渡したいためだ。中本さんは「とにかく歌がうまかった。声はいいし、古い歌をこれだけうまく歌える人はいなかった。あんまりうまいのでDVテープに録音していた」と振り返る。テープには「東京音頭」「赤い睡蓮」「妻恋道中」など29曲が録画されている。
テープを渡そうと思っていた矢先、突然姿が見えなくなった。もう5年ほど前になる。五日市辺りの人だと聞いたことがあるが、詳しい手掛かりはない。小柄で細面の40代後半の静かな感じの女性だったという。
中本さんは「『ナツメロ会』でも歌ったし、会員ももう1回歌を聴きたがっている。私もテープを渡せずじまいで心残り。ご存じの方がいたら連絡してほしい」と話す。