青梅市在住の吉田慎太郎さんが1月25日、「歌剣(かけん)の維新歌」(展転社)を出版した。本は歌でつづる幕末史がテーマ。取り上げた志士たちは120人余り。それぞれが示した精神と行動を、志士たちが詠んだ和歌を通して描き出した。
幕末・維新を端的に表現すれば動乱。吉田さんは「こうした時代を先駆けるにはやはり、鋭いまでの感性と果敢な実践力が求められる。同時に、血の通った喜怒哀楽という普通の人の感情で動いていることが、彼らの歌に接することで分かる」という。
表題の歌剣という耳慣れない言葉は吉田さんの造語で、「歌心剣魂」を縮めたもの。つまり、ものの哀れを知り、武士道も体得した生き方にほかならない。それが感じられるこの本は志士たちの万葉集だといえよう。
「長州の吉田松陰は西洋文明を吸収しようとアメリカ渡航を企てた。国禁を省みず、伊豆の下田で黒船に乗り込もうとしたが無念にも失敗。しかし、その遠大な志と決断に日本男児の真面目を見る心地がする」
こう話す吉田さんは、松陰の遺詠のなかから「かくすれば かくなるものと 知りながら やむにやまれぬ 大和魂」を選んだ。松陰といえば萩の松下村塾。この私塾からは高杉晋作や久坂玄瑞が巣立ち、彼らの生涯もまた詩的だった。
吉田さんの和歌への傾倒は、詩吟の師匠だった母に負うところが大きい。詩歌は小学生の頃から身近な存在だった。やがて青梅市東雲短歌会に参加し、2021年には短詩集を出版した。「歌を柱に据える」手法は次回作にも引き継がれるという。今度は歌でつづる日米戦争。軍人や政治家だけでなく、庶民の声も集めながら、悲劇の戦史に取り組むという。
価格は2,750円。書店、ネット通販で扱う。