養蜂業を営む健康自然工房(あきる野市二宮、TEL 042550-5383)が「若者が農業に参加できる様に」と、新たな事業展開へと挑戦している。
現在、同市と八王子市に8カ所の養蜂場を持ち、5万匹以上の蜜蜂を育てる同社は、「東京で一番大きな蜜蜂ファーム」といわれている。現在は養蜂業を中心に、地域活性化を目的とした蜂の貸し出しを行う事業や、生産物を加工販売していく6次産業化事業も計画。「あきる野という素晴らしい環境だからこそできる農業がある。若者が農業で食べていける事業を作りたい」と同社社長の犬飼博さん(63)は話す。
犬飼さんは山形県の農家に育った。高校卒業後、農業を志すが7男だったため、国内での独立を諦め、世界を目指した。卒業後に勤めたのは当時、日本で一番大きな養蜂場。蜜蜂の魅力にすっかり取りつかれた。
20歳の時、念願のアルゼンチンへと単身移住。花を扱う農家で2年働き、養蜂家として独立した。失敗と成功を繰り返す中、突然「キラービー」として恐れられたどう猛なアフリカ蜂が、アルゼンチン北部で急増。高い繁殖力と飼育不可能と言われたアフリカ蜂の猛威に、地元の蜜蜂も全滅の危機に追いやられたという。
養蜂を諦め、帰国したのは40歳の時。集団行動をとる蜜蜂が、外部から入る細菌を巣で繁殖させないため集めてくる「プロポリス」の輸入販売を行う店舗を中野区で開店した。病気予防の健康食品とし当時流行したプロポリスだったが、犬飼さんは「もう一度、蜂飼いをやりたい」と関東一円で理想の土地を探し続けた。2年前、豊かな蜜床を持つ同市に巡り合い、再び養蜂業をスタートさせた。「蜂に取りつかれたら、やめられない」と犬飼さんは笑顔で話す。
現在、越冬中の蜜蜂は1月になると繁殖をさせ、春に採蜜。その後は最新の注意を払い、管理を行っていく。そうして同社が手塩にかけて作った蜂蜜は、4月に採蜜するサクラ、5月に採蜜するアカシア、希少な日本蜜蜂から採蜜する古来蜜の3つ。サクラは濃厚な味わいが特徴で、口に入れるとバラ科である桜の香りがふわっと広がる。アカシアは癖が少なくさっぱりした口当たりで大人に人気の味わい。古来蜜は蜂蜜とは思えない、かんきつ系のフルーティーな味わいで、リピーターが最も多い。ほかにも、蜂の子やローヤルゼリー、プロポリスの生産、販売なども手掛ける。
「蜂がいないとイチゴが作れない。花粉勾配だって行われない。蜂は自然界には必要不可欠なんです」と犬飼さん。「養蜂は、あくまで農業で畜産業。全てが自然相手だからこそやめられない。私は根っからの蜂飼い」と、現在越冬中の蜜蜂たちを優しく見つめていた。
蜂蜜はホームページのほか、JAファーマーズセンター(同市二宮)、ルピア内1階の「いろどり屋」(同市秋川)、瀬音の湯(同市乙津)で購入できる。