武陽ガス(福生市本町)の技術研究室長の秋山惠男さんが、「移動式ガス発生設備」の発明考案で評価され、本年度春の黄綬褒章を受章した。
移動式ガス発生設備とは「プロパン」を原料として都市ガスを製造・供給することができる移動可能な装置。同社が独自に開発したベンチュリーミキサーのノズルからプロパンガスを噴出させ、その際に発生する負圧を利用して空気を吸入。これによりプロパンと空気の混合比を常に一定に保ちながら安定した熱量の都市ガスを製造・供給することができる。プロパンの自然気化圧を動力源に利用するため、電気など外部の動力を一切使用しない自立型の都市ガス製造装置となる。
都市ガスは全国約2,890万戸で利用され、事業者はガス導管網の健全性を保つため24時間体制で維持管理している。しかし阪神・淡路大震災での都市ガス供給停止戸数は約86万戸に及び、復旧までに94日を要した。被災地の都市ガス早期復旧に当装置が利用できると考えた国は同年3月1日、当装置を「移動式ガス発生設備」として初めてガス事業法上の「ガス工作物」に位置付け、避難所や病院、介護施設をはじめ、重要施設に設置したことで速やかに都市ガスの供給を再開することができた。
新潟県中越地震では、設備の一時的な貸与を行う広域融通体制の整備・充実に関する一連の手続きが簡素化された。東日本大震災後の復旧において初めて、設備を直接ガス導管へ連結することで広域パイプラインへの臨時供給も行われた。用途は災害復旧だけではなく、古くなった都市ガス導管の入れ替え工事等の際など、近隣にガスをつなげながらの施工が可能となり、従来工法でのバイパス仮設配管等が不要になったことで工事費を大幅に削減できるようになった。
現在、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスのガス事業者4社を含む全国131社が3000台以上を保有している。