
「小作駅前の肉屋さん」として親しまれてきた羽村の「伊勢屋精肉店」(羽村小作台)が3月いっぱいで、53年の歴史に幕を閉じる。2代目店主の宮崎正信さんが自身の体調を踏まえ決断した。常連客は名残を惜しんでいる。
1978(昭和53)年に宮崎さんの兄・守正さんが創業。正信さんも支店などを任され、顧客からの信頼を得てきた。その後、兄から経営を引き継ぎ、パートを含め10人ほどで切り盛りしてきた。
時代とともに総菜に力を入れた。コロッケやメンチカツをはじめポテトサラダやグラタンも手作りで販売。夕飯のおかずや酒のつまみに喜ばれ、多い時は30種類を超えた。中でも「揚げハンバーグ」はテレビ東京の情報番組「出没!アド街ック天国」で紹介され、話題を呼んだ。
小作駅が木造の田舎駅だった頃から看板を掲げた店は数軒。1986(昭和61)年に駅が橋上化すると、大手電機メーカーなどの会社員が乗降する東口はにぎやかになった。バブル経済のただ中には不動産関係者の間で「東口は西多摩を代表する都会になるのでは」との声も聞かれたほどだった。
伊勢屋は、昭和、平成、令和と店を取り巻く環境が大きく変わる姿を見続けてきた。宮崎さんは「ひたすら真面目に仕事をし、皆さんに支えられ続けられた。満足している」と話す。
屋号をそのままに店を引き継ぐ人が見つかったのが宮崎さんにも、顧客にも救い。準備が整い次第、4月中旬にも再オープンする。
リタイア後は「まずは体を休ませたい」と宮崎さん。「元気なときは店をのぞいて、アドバイスできることがあれば声をかけたい」という。
営業時間は9時~19時30分。揚げ物の販売は、10時~12時30分と15時~17時30分。この時間帯であれば、ショーケースにない揚げ物も揚げるという。日曜・祝日定休。