青梅に今年オープンした映画館「シネマネコ」(青梅市西分町)が10月20日、グッドデザイン賞を受賞した。
かつて織物産業で栄え映画館が3館あった青梅の商店街では、長年映画看板をまちおこし事業としてきたが、映画館のないまま50年が経過。「映画にまつわる街の灯を絶やしたくない」と感じた若手経営者、チャス(東青梅3)社長の菊池康弘さんが映画館の復活に動き始めた。
同館は登録有形文化財に指定された築85年以上の洋風木造建築を改修し生まれた。映画看板事業などを手がけてきた商店街と、菊池さんが検討を重ね事業化。建築物内部に隠れていた小屋組や木摺等の痕跡を丁寧に再構成し、歴史を紡ぐ織物の街のシンボルとしての地域文脈を表現するリノベーションとした。
建物は昭和初期建造のもので外観は基本的に当時のままだったが、室内は石こうボードで壁、天井が覆われ建物の個性は失われていた。事前調査や改修記録から、小屋組は木造トラス構造によって大スパンを可能にしていることが分かり、無柱空間を必要とする映画館に生かし、小屋組を現す空間を目指した。壁の内部には「木ずり」と呼ばれる、現在ではほとんど使われることのないしっくいの下地材が比較的良い状態で眠っていることが明らかとなり、丁寧に釘や腐食部分を全て取り除いて内装材として再活用し、「ここにしかない地域の文脈の表現」を目指したという。
今回のグッドデザイン賞では「商業のための建築・環境」のカテゴリーで、こうした事業が評価され受賞に至った。菊地さんは「これからもたくさんの人に愛される場所を目指し頑張っていきたい」と話す。